例題 11 速度効果を考慮した軸対称定常磁場解析
例題10の解析モデルをアレンジして軸対称問題を定義し,速度効果を考慮した軸対称定常磁場解析を行ない, 解析結果をANSYSで解析した結果と比較しました。  
解析モデル

図1に解析モデルを示します。導体は速度 Vz で z 方向に移動していますが, 定常状態を仮定していますので1回の定常解析により解を求めます。回転軸は z 軸とします。

  

 

図1 解析モデル (寸法の単位は m )

 
解析条件
材料 空気,コイル
比透磁率 1.0
材料 導体
非透磁率 1.0 ,電気抵抗率 4.31E-08[Ωm] (導電率:2.32E+07 [S/m]) ,移動速度:パラメータ
材料 鉄心コア

比透磁率 500.0(一定値)

励磁電流
上側コイル部(手前から奥へ) 1000 [AT] (駆動電流密度:1.0E+07 [A/m2])
下側コイル部(奥から手前へ)−1000 [AT] (駆動電流密度:−1.0E+07 [A/m2])
境界条件
AB,BC,DA 境界上:ベクトルポテンシャル 0
CA 境界上:自然境界条件

 

 
解説
軸対称定常場運動解析の支配方程式は以下のようになります。

導体の渦電流密度は次式で計算されます。

速度起電力を表す項は,流体解析などでいう移流項に相当します。
移流項が支配的な現象を数値解析するためには,安定的に解析を行うために,離散化に対して特別の配慮をする必要があることが知られています。
ガラーキン法による離散化では,運動を考慮した解析においては,次式で定義されるペクレ数 Pe < 1 であることが安定的に解析できる指標とされます。

ここで,
μ:透磁率
σ:導電率
V:導体の移動速度
L:移動方向のメッシュ辺長

解析は,導体の速度を
0.0 [m/s]
1.0 [m/s]
10.0 [m/s]
100.0 [m/s]
とした4つのケースについて行います。
結果は磁束線分布,磁場 B [T] 分布,導体表面ポテンシャルグラフを求めます。

図2にメッシュ図を示します。 本問題は文献に近い分割数を目指し三角形1次要素を使用し,要素数は896です。
ANSYSでは要素数は448であり,導体部分にPLANE53,それ以外にPLANE13要素を使用しました。

 
メッシュ

図2 メッシュ図

 

解析結果 磁束線分布  磁束密度分布

 
図 3-1 磁束線分布 速度 0.0 m/s Pe:0.000 / ANSYS 
 

図 3-2 磁束線分布 速度 1.0 m/s Pe:0.070 / ANSYS
 

図 3-3 磁束線分布 速度 10.0 m/s Pe:0.701 / ANSYS
 

図 3-4 磁束線分布 速度 100.0 m/s Pe:7.006 / ANSYS
 
 
図 4-1 磁束密度分布 速度 0.0 m/s Pe:0.000 / ANSYS 
 

図 4-2 磁束密度分布 速度 1.0 m/s Pe:0.070 / ANSYS
 

図 4-3 磁束密度分布 速度 10.0 m/s Pe:0.701 / ANSYS
 

図 4-4 磁束密度分布 速度 100.0 m/s Pe:7.006 / ANSYS
 

 

 
図 5-1 磁束線分布 速度 0.0 m/s Pe:0.000 / ORIGINAL 
 
 
図 5-2 磁束線分布 速度 1.0 m/s Pe:0.070 / ORIGINAL 
 

図 5-3 磁束線分布 速度 10.0 m/s Pe:0.701 / ORIGINAL
 
 図 5-4 磁束線分布 速度 100.0 m/s Pe:7.006

図 6-1 磁束密度分布 速度 0.0 m/s Pe:0.000 / ORIGINAL
 
図 6-1 渦電流密度分布 速度 1.0 m/s Pe:0.070 / ORIGINAL

図 6-3 磁束密度分布 速度 10.0 m/s Pe:0.701 / ORIGINAL
 
図 6-4 磁束密度分布 速度 100.0 m/s Pe:7.006

  図7 渦電流密度分布 左から速度 1.0 m/s 10.0 m/s 100.0 m/s

解析結果 導体表面上のポテンシャル分布

 

図8 速度 0.0 m/s 静止状態

 

図9 速度 1.0 m/s

 

図10 速度 10.0 m/s

 

図11 速度 100.0 m/s

 

ANSYSとの結果は良好な一致を示しています。このことから作成したプログラムが正常に動作していることが確認できました。