電磁気学における磁性体の境界条件1
電磁気学的に磁場の境界条件というものがあります。
磁場は異なる2つの媒質間で応答が変化します。
ここで扱う境界条件とは,その2つの媒質の境界面で満たすべき条件のことです。
 

図 1 境界における磁場

 

図 2 に示すように磁場 B が,媒質 1(例えば空気)から媒質 2(例えば鉄)に入射する状況を考えます。
この図で厚みが h の層は境界層を示します。
この境界層の微小断面積を 儡 とします。
h を小さく,すなわち境界層の厚みを非常に薄くしていけば,境界層の側面から漏れ出る磁場は 0 と みなせることが期待できます。

 

  

図 2 境界面における磁場 B (境界層の厚さ h を小さくすれば,境界層の側面から漏れる磁場は無視してもよさそうです)

数学的に記述すると  
(1)

となります。
つまり媒質 1 側から微小断面積 儡 を通じて入射した磁場 B1 は, すべて媒質 2 側へ出てこなくてはなりません。
これは「磁場の発散は常に 0 である」ので自明です。
これを模式的に描いたのが図 3 です。

図 3 境界における磁場の模式図

境界層について,磁場は横から漏れないので,磁場は境界面に対して法線方向の成分のみ考えればよく,
媒質 1 側と 2 側で磁場の発散は 0 であることより,次の式の関係が成り立ちます。

 

(2)
つまり境界面 S を通って媒質 1 側から入る磁場と,媒質 2 へ抜ける磁場は等しくなければなりません。
ここで磁場の法線方向成分を次のように表します。
(3)

式(3)を式(2)に代入すれば次式が得られます。

(4)

つまり「境界面では磁場 B の法線方向成分は連続である」という結論を得ます。
ちなみに,連続というのは,微分可能であるということです。
微分可能ということは,微分係数が一意に定まるということです。

ここで,磁場 B [ Wb / m2 ] に対応する磁場 H [ A / m ] を考え, その法線方向成分を Hn とすれば

(5)
です。
ここで媒質 1 を空気,媒質 2 を鉄とすれば,磁気透磁率は鉄のほうが明らかに大きいので,
 

(6)
です。したがって磁場 H の大小関係は次のようになります。  
(7)
これより,「境界面では磁場 H の法線方向成分は連続ではない」 という結論を得ます。